不動産の鑑定や建築などのコンサルティングサービスを手がける大和不動産鑑定(東京・千代田区)が、同社のクライアントの管理担当者を対象に6月24日〜7月10日に賃料減額要請に関するアンケート調査(有効回答数63社、事例数135件)を実施した。
それによると、4月7日の緊急事態宣言以降に入居テナントから賃料減額を要請されていたケースが全体の9割を占めた(グラフ1)。
コロナ禍という不透明な経済状況で、不動産市場が相当冷え込んでいる様子を伺い知ることができる結果となった。
新型コロナウイルスの感染が拡大する以前の不動産市場は、超低金利であふれるマネーがなだれ込み、高値売買が繰り広げられた。今年7月に開催されるはずだった東京五輪に向け都市部を中心に再開発などの建設ラッシュも続いていた。
だがコロナショックによって事態は一変。不動産市場の売買取引がピタリと止まった。3月に入ると、商業施設やホテルなどの稼働率が急落。テナントやホテル運営者から賃料減免要請が殺到した。
REIT(不動産投資信託)は、3月17日に一時17%安となり、1カ月で半分にまで落ち込んだ。そして4月に緊急事態宣言が出たことで、不動産市場全体が凍結状態に陥った。
アンケート結果を見ると、テナントから減額要請を受けた期間は「約3カ月」が36%で最も多く、次いで、「約半年」が21%、「約1年」が9%、「緊急事態宣言が解除されるまでの間」が7%と続いた。そして減額要請を受けた額の割合は「約50%減」が29%で最多。以下、「約30% 減」(28%)、「約10%減」(9%)、「100%減」(7%)となっている。
全体の9割が減額要請を受けたことが分かったが、それに対して43%が応じ、51%が応じていないと回答した(グラフ2)。
減額要請に応じたテナントの業種は、「飲食店」が59%、「ホテル等」が17%、「物販店等」と「その他」がそれぞれ12%だった。
コロナ禍の長期化による飲食店、小売店などの売り上げ低迷に伴い、不動産オーナーが対応に苦慮している状況がうかがえる。
減額要請に応じた期間は「約3カ月」(33%)が最も多く(グラフ3)、その額は約30%〜約50%減としたケースが7割を占めた(グラフ4)。
東京・渋谷区の不動産オーナーは本紙の取材に対して「テナントに対して、半年は家賃を半額、それ以降は当面2割を減額することにした。家賃が減るのは厳しいが、テナントの店舗に踏ん張ってもらって、この事態を乗り越えるしかない」と話す。
興味深いのは、1年間の減額要請を受けた不動産管理者が9%いたのに対して、それをそのまま受け入れたケースはゼロ%だったという点だ。
賃料の減額要請に一切応じていないという不動産オーナーは本紙の取材に対して「テナントも厳しいだろうが、応じてしまうと銀行への返済に影響する」(新宿区の不動産オーナー)と苦しい胸の内を明かす。
また「賃料減額要請がなくても賃料減額を主体的に実施しているか」という質問では、「いいえ」が81%、「はい」が9・5%だった(グラフ5)。
主体的な賃料減額の実施内容としては、「緊急事態宣言が解除されるまでの間、約50%減」や「同100%減」、「同休業日数の日割り減」、「約3カ月間は賃料30%減」などの対策を講じたという。
賃料減額を巡って何かトラブルが起きているかという項目では、17%が起きていると回答した。
トラブルの内容としては「テナント側がオーナーとの合意を得ず、テナント側自身が希望する金額だけを一方的に入金してきた」「支払い猶予で合意したにもかかわらず、猶予後の賃料についても支払いがない」などが挙がっている。
オフィスビルの解約は一般に6カ月前に通知することになっており、前出の渋谷区の不動産オーナーは「今すぐに解約が表面しなくても秋以降に解約が増えるのではないか」とし、「コロナが長引けば長引くほど、家賃を滞納するテナントが出てくる」事態を懸念している。
(2020/10/02更新)