【総務省認定】とってもお得な返礼品はコレ!

大臣が「けしからん」と〝お墨付き〟

ふるさと納税で特産品ゲット


 任意の自治体に寄付をすると住民税や所得税が優遇される「ふるさと納税」の2017年度の実績を、総務省が取りまとめ公表した。同制度を巡って総務省は、返礼品の価値を寄付金の3割以下に収めるようたびたび要請しており、今回の実績取りまとめでは、要請に従わない自治体12団体を公表するに至っている。ただし、これらの12団体は高額な返礼品で多額の寄付を集めている人気の自治体であるのも事実だ。総務省が「けしからん」と思いながらも納税者の寄付を集める12自治体の「とってもお得な」返礼品にスポットを当ててみた。


 まず17年度のふるさと納税の実績を確認しておくと、1年間で行われた寄付は約3653億円で、前年から28%増えた。寄付件数は前年比36%増の約1730万件だった。過度に豪華な返礼品を戒める総務省の自粛要請の影響か、伸び率こそ前年から鈍ったものの制度利用者は安定して増え続けている。なお約1730万件の寄付のうち、確定申告のいらない「ワンストップ制度」の利用は約376万件で、全体の5分の1ほどだった。

 

 多くの寄付を集めた人気上位の20自治体は「表1」のとおり。全国で最も多くの寄付を集めたのは大阪府泉佐野市で、受入寄付額135億3300万円と、2位の宮崎県都農町の79億1500万円に大きく差を付けた。

 

 1位の泉佐野市や4位の佐賀県みやき町は、今回総務省から〝けしからん〞として名指しされたリストに含まれる、高額返礼品を送る自治体だ。泉佐野市は、新潟県産の米や信州の桃といった他県の農作物から、ケース単位のビール、全国の特産品詰め合わせ、モンゴルで開催される国際マラソンへのパック旅行券など、非常に幅広いジャンルの返礼品を潤沢に用意し、納税者の人気を集めた。

 

国産牛、商品券、缶ビール…

 また4位にランキングしたみやき町は、豊富な種類の牛肉や豚肉、女性に人気の高いアロマ用品などに寄付が集まった。なお佐賀県は牛肉の名産地ではあるものの、同町が提供する人気の返礼品は単に「国産牛」として産地を明らかにはしていない。

 

 もちろん、総務省の要請どおりに返礼品の価格を見直し、それでもなお寄付を集める自治体も存在する。例えば3位の宮崎県都城市は、総務省の自粛要請を受けて、前年度1位の寄付を集めた返礼品のメニューを見直したが、それでも74億7400万円で3位に入っている。しかしこれにはカラクリがあり、同市は返礼品の価格を「事業者の利益を上乗せした定価」から「原価」に解釈変更し、総務省の〝監視〞をくぐり抜けている。

 

 通知どおりに返礼率を見直した前年度3位の焼津市は16位、前年度2位の長野県伊那市に至っては20位以下にランクを落としていることから見ても、どうしても全体の傾向として、高還元率の返礼品を送る自治体が、そうでない自治体よりも多くの寄付金を集められるという現状がはっきり表れている。

 

 そして今回、返礼品の価格が寄付金額の3割を超えていたり、地場産品以外の返礼品を使って10億円以上の寄付を集めていたりする「けしからん」12の自治体名が公表されたわけだ。裏を返せば、皮肉にも総務省が認定し、大臣がわざわざ「けしからん」とお墨付きを与えるほど〝お得な返礼品〟を用意している自治体のリストということになる(表2)

 

自治体としては「何もしないわけにはいかない」

 12自治体を自分の利益ばかり追求して制度の和を乱す迷惑な存在とみなすか、地方自治の大原則に則って積極的な制度活用に取り組んでいると捉えるかは人それぞれだが、少なくとも少子高齢化が進んで人口減少が深刻化するなかで、地方の各自治体が何もしなければ座して死を待つのみだという危機感を抱いていることは確かだろう。

 

 ふるさと納税の民間ポータルサイトや自治体の特設サイトなどを基に抽出した、12自治体の人気返礼品を「表3」にまとめた。野田聖子総務大臣は要請に従わない自治体に対して、「大変残念で、必要な見直しを速やかに行っていただきたい」とコメントする一方で、罰則などを伴う規制については、「私どもから強制という形は、決してとるべきではない」と明確に否定した。

 

 12自治体がこのまま強硬姿勢を続ければ、総務省の要請に従った結果として割を食う形になっている他自治体が、再び高額路線に舞い戻る可能性もゼロではない。納税者としては嬉しい展開だが、制度の将来にとっていいのかどうか、悩ましいところだ。

(2018/09/03更新)