税理士の協力でいろいろお得

税務だけじゃもったいない!

「経営改善計画」の策定で最大200万円の補助金


 税理士などの専門家が登録する「経営革新等支援機関」の制度が始まって以降、税理士の協力が適用の条件となっている補助金や税制特例は増えている。平成30年度の国の中小企業関連予算は歳出総額のごく一部の1800億円に過ぎず、中小企業向けの制度は限られているなかで、適用できる制度があるなら使わない手はない。会計事務所に依頼する業務が税務申告代理や記帳代行だけではもったいない。税理士の協力が適用条件となっている各種制度をまとめた。


 中小企業を対象とした補助金が、新年度のスタートとともに相次いで公募を始めている。4月27日に募集開始となった「事業承継補助金」は事業承継をきっかけとした経営革新や事業転換にかかる費用の最大3分の2が補助されるもので、補助額の上限は新商品の開発などの「経営革新」が200万円、既存事業の廃止などの「事業転換」が500万円となっている。

 

 この補助金を受けるには「経営革新等支援機関」の協力を得る必要がある。支援機関とは、経営支援のプロフェッショナルと経産省に認定された専門家が名乗れるもので、全体の8割近くを税理士もしくは税理士法人が占めている。平成24年にこの制度が創設されて以来、国は補助金や優遇税制など様々な施策に支援機関の活用を盛り込んできた。会社は税理士に税務申告や記帳の代理業務を頼むだけではなく、補助金の受給支援など多方面にわたるサポートの依頼もできるというわけだ。

 

 支援機関が関わることで会社が受けられる補助金のうち、恒久的に募集しているものとしては、銀行に返済条件の緩和を依頼する際に必要な「経営改善計画」を支援機関と一緒に策定すると受給対象になる補助制度がある。支援機関に支払う計画策定費用やその後のフォロー費用の3分の2を上限に、最大で200万円の補助を受けられる。

 

 また、この補助金と類似のものとして、支援機関の協力のもと、資金繰り管理や採算管理の見直しといった簡易な経営改善プランを「早期経営改善計画」としてまとめた企業が受けることができる補助金も昨年始まった。計画策定費用やその後のフォローのための費用の3分の2の額が補助されるのは同じだが、こちらの補助金の額は最大で20万円までとなっている。

 

自社株の税猶予特例に専門家のサポート必須

 支援機関となっている税理士が関わることで税優遇の対象にもなる。代表的なものが自社株の相続や贈与の負担を軽減する事業承継税制の特例だ。

 

 4月からスタートした特例で、支援機関の協力のもと「特例承継計画」を策定し、5年後までに都道府県に提出すると、通常の事業承継税制では3分の2までしか認められない猶予対象株式の割合が10割に引き上げられ、また相続税なら評価額の8割だった猶予上限が10割に拡大される。さらに通常の事業承継税制で猶予を受けられるのは後継者1人だけだが、特例では3人まで猶予の対象となる。

 

 支援機関の協力のもとで人材育成や設備投資などの見通しを盛り込んだ「経営力向上計画」を策定した会社が、機械や装置にかかる固定資産税の軽減を受けられる税制もある。赤字の会社も対象になる制度で、制度開始から1年半で5万社が利用している。

 

 ただ、顧問税理士が必ずしも支援機関に登録しているとは限らない。支援機関となっている税理士は全税理士の3分の1程度に過ぎず、もし顧問税理士が登録していなければ、別の支援機関に協力を要請する必要がある。

 

 中小企業庁が実施したアンケート調査によると、直近1年間で経営革新等支援業務を「ほとんど行っていない」と回答した支援機関が全体の3分の1を占めており、補助金の対象となる会社が顧問税理士から提案を受けていない可能性もある。経営者自ら話を持ち掛けるスタンスも必要だ。

 

財務の信頼度アップで優遇融資の対象に

 ここまでは支援機関に登録している税理士のサポートが適用要件となっている制度を見てきたが、支援機関への登録の有無にかかわらず税理士の協力があれば受けられる優遇制度もある。

 

 例えば三井住友銀行の「中小企業向け融資クライアントサポートローン」では、手数料が通常のビジネスローンなら初めての借り入れで7万5600円(借入金額3千万円以上は9 万7 2 0 0円)、それ以外で3万2400円(同5万4千円)だが、税理士が関わることで無料となる。条件は国が策定した中小企業向けの会計ガイドライン「中小企業の会計に関する指針」に則った会計処理をしていることについて、税理士のチェックを受けていることだ。

 

 中小会計指針の適用企業を優遇する金融機関は他にもあり、日税連によると109機関に及ぶ。事務手数料の免除のほか、0・2%程度の金利引き下げや原則無担保など、融資条件の面で優遇される。

 

 また、税務申告の際に顧問税理士が申告内容の詳細をチェックしたことを示す「書面添付」を付けた会社や、税理士・会計士を会計参与として社内に迎え入れた会社の金利を優遇する金融機関もある。いずれも、税理士の協力によって経理部門の強化や財務データの対外的な信頼性の向上につながるとされているため、優遇するというわけだ。

 

 税理士に依頼できることは税務申告代理や記帳代行にはとどまらない。税理士の能力を最大限に活用させてもらい、二人三脚で経営の発展につなげたい。

(2018/06/28更新)