売り上げが減少している事業者に現金を支給する持続化給付金の申請にあたっては、もしも今後さらに経営状況が悪化する見通しであれば、少し時間を空けたほうが受け取れる金額が増えるかもしれない。苦しい資金繰りのなかでは喉から手が出るほど現金はほしいところだが、ここは冷静な判断が必要だ。申請時期によって受給額が大きく変わる給付金は持続化給付金以外にもある。コロナ関連の給付金や補助金の申請のタイミングについて注意点をまとめた。
持続化給付金は新型コロナウイルス感染拡大の影響で1カ月の売上が前年同月比50%以上減少している事業者を対象にした給付金で、受給額は「前年の年間事業収入‒(売上が半減している任意の月の事業収入×12)」の計算式で算出する。申請期限は来年1月15日となっている。上限は法人が200万円、個人事業者が100万円。資金繰りの厳しい事業者は1日も早く申請して、入金されるのを待ちたいところだろう。
だが、ここで焦りは禁物だ。覚えておかなければならないのは、持続化給付金の申請ができるのは一度きりとなっていることだ。つまり、一度受給した後に経営状況がさらに悪化して計算上は給付額が上がったとしても、受け取った分との差額の申請はできない。
仮に、昨年の事業収入が1千万円の事業者の今年5月の売上が、昨年5月の売上150万円から半減して75万円になったとする。
これを基に5月を「任意の月」として申請すると、前出の計算式に当てはめれば給付額は100万円(=1千万円‒75万円×12)となる。
その後、9月の売上が昨年9月の140万円から70万円に半減すれば、受給額は160万円(=1千万円‒70万円×12)となるはずだが、給付金を一度受給していれば再申請はできず、差額の60万円を受け取ることができない。
売上がどこまで落ち込みそうなのか、申請期限内での収入の底はどのあたりか、どの時期に資金調達が必要になるのか等々、総合的に考えて申請時期を決める必要がありそうだ。
持続化給付金と同様に、家賃支援給付金も申請時期によって受け取れる金額が変わることがある。こちらの給付金は、今年5月〜12月の任意の期間に、前年度の売上と比較して単月で50%、または3カ月合計で30%以上減少しているテナント事業者が受給できる。最大で月100万円、半年でトータル600万円が支給される。
補助される額は、月額家賃75万円以下の部分は3分の2、75万円超の部分は3分の1(個人事業主は37・5万円が基準)で、上限は複数店舗を経営する法人が月額100万円、一店舗経営の法人が50万円となっている(個人事業主はそれぞれ半額が上限)。
給付金の額は、申請時の直近1カ月の間に支払った月額家賃を基にして決まる。そのため、物件のオーナーから家賃の減額を受けていると、その金額を基に給付額が決められてしまい、元々の契約の家賃額で計算するより少ない額しか受け取れなくなってしまう。
このため、いまは家賃が減額されていても、遠くないうちに減額期間が終わる予定であれば、元の金額に戻ってから申請したほうが良いだろう。申請期限である来年1月15日までの家賃の額の変動を見通し、最も高額となるタイミングで申請すれば、より多くの給付金を受け取ることが可能となる。
このほかの新型コロナ関連の事業者向けの補助金には「ものづくり・商業・サービス補助」や「持続化補助」、「IT導入補助」がある。これらの補助金の申請期限は表のとおりとなっているものの、いずれも締め切り後に新たな補助枠の募集が始まる可能性が高い。例えばIT導入補助は8月末に当初の期限を迎えたが、その後も1カ月単位で締め切りが延長され、新たな枠で募集されている。
国民が一律10万円受け取れる「特別定額給付金」の申請を忘れた世帯が少なからずあったことが話題となっている。本来ならば堂々と受け取れるはずだった給付金や補助金を、タイミングを逸したために受け取れなくなるといったことのないように、申請期限を確実に押さえ、生活や事業を立て直すようにしたい。
(2020/10/08更新)