今年も残りわずか。年末調整の事務に取り掛かる時期がやってきた。今回の年末調整からは平成29年度税制改正に伴う配偶者控除の見直しが反映され、手続きの手間が増えることになる。控除額や適用の可否に昨年までとは異なる判断が求められ、対応できなければ申告ミスが発生してしまうことになる。
今年から所得税の配偶者控除の適用要件と控除額が大きく変わった。昨年までは、配偶者の収入が103万円以下なら38万円の所得控除を受けることができた。また103万〜141万円であれば、配偶者控除より控除額が低い配偶者特別控除の対象とされてきた。これが今年からは、配偶者控除の上限である103万円が150万円に、配偶者特別控除の上限である141万円が201万円に、それぞれ引き上げられている。
また今年から、配偶者控除を受ける本人の給与収入が多いほど控除枠が減る仕組みとなり、1120万円を超えると通常の38万円から26万円に縮小し、1170万円超で13万円に減額される。さらに1220万円を超えると、配偶者控除の適用はゼロとなる(表)。
配偶者控除を適用できなくなれば、単純に課税所得が38万円増えることになる。納税額で見ると、1千万円超の所得に掛けられる所得税率は33〜45%なので、年間約12万5千円〜17万円もの負担増となってしまう。
配偶者控除の改正は税負担の増加だけではなく、年末調整の事務負担の増大も招く。これまでと異なる対応によって申告ミスを避けなければならない。
まず、以前は社員の配偶者の所得だけで控除額を判断できたが、今年からは社員本人の最終的な所得も把握しなければならなくなった。もちろん自社の社員のおおよその所得の把握は難しくないが、年末調整の書類をまとめた後に臨時ボーナスの支給などで年収が変われば、所得額によっては提出書類を再度取りまとめなければならない。会社や社員に二度手間を強いる仕組みとなっている。
また、「配偶者の収入が103万円以下か否か」という単純な物差しだけではなくなるため、特に紙ベースで給与管理をしている会社や古い給与ソフトを使っている会社は控除額を誤るリスクが高まる。
さらに、去年までは配偶者の所得が一定額以上で配偶者控除を適用できなかった社員が、配偶者の所得要件の引き上げによって新たに控除対象となる可能性もある。これまで適用していなかったからといって今年も不適用とは限らないので注意が必要だ。
何より制度の見直しに伴って書類の様式も変わるため、書き方に疑問を持つ社員が例年以上に増えることが予想される。事前に制度見直しの内容や提出書類の書き方について社員にきちんと周知しておくことが不可欠となる。
所得税は1年分の所得を翌年に確定申告することによって納めるのが原則だが、給与所得者に限っては会社が年末調整をすることで納税の手続きが完了する。サラリーマンにとって手間の面ではありがたい制度だ。ただ、自分の所得を把握して将来に向けた節税策を練るためにも、全ての社員が年末調整に関心を持つようにしたい。
(2018/11/28更新)