公示地価 地方間で広がる差

訪日需要が地方都市を押し上げ


 国土交通省がこのほど発表した今年1月1日時点の公示地価によると、全国の地価は前年から0・7%上昇し、3年連続の上昇となった。

 

 住宅地ではリーマン・ショック以来、9年ぶりの下げ止まりとなった前年から上昇に転じ、地方圏ではバブル期以来26年ぶりのプラスに転じるなど、全国的に上昇傾向が鮮明となった。

 

 ただし都市部以外の地方では下落幅の縮小は見られるものの全用途でマイナスが続き、交通に便利で都市部に近いエリアでの地価が上がる一方、下落が続く地点も依然多く、明暗がより分かれた格好だ。

 

 

 3年連続の上昇を主導したのは、都市部の商業地の地価上昇だ。商業地は前年の1・4%上昇からさらに伸びて全国平均で1・9%上昇。

 

 三大都市圏では東京圏で前年比3・7%、大阪圏で4・7%、名古屋圏で3・3%と軒並み伸びたが、それにも増して札幌、仙台、広島、福岡など地方中枢都市では、前年の6・9%を上回る7・9%の著しい上昇を示した。

 

 海外からの観光客が増加していることを背景に店舗やホテルなどの需要が高まり、それに伴いオフィスの空室率も低下傾向が続いている。

 

 

 

 全国で最も高い伸びを見せたのは北海道虻田郡倶知安町で、前年から35・6%上昇した。倶知安町は外国人観光客に人気のスキーリゾートであるニセコの所在地。全用途での上昇率1位〜3位を倶知安町が独占し、前年1位だった大阪市の道頓堀1丁目にあるふぐ料理チェーン「づぼらや」は4位まで順位を落としている(表1)

 

 

 住宅地では9年ぶりの下げ止まりを見せた昨年から、ついに上昇に転じた。全国的にも上昇や下落幅の縮小がみられたが、地域間には大きな差が出ている。

 

 三大都市圏が0・7%上昇、地方中枢都市が3・3%と前年以上に上昇する一方で、それ以外の地方圏は0・1%の下落となった。

 

 高齢化と人口減少が進むなかで、より生活に便利でインフラの整備されている都市部に人が集まる状況がうかがえる。

 

 

また東日本大震災以降に顕著となった災害リスクへの懸念はさらに進行し、津波の恐れがある沿岸エリアでは多くの地点が地価を下げた。全国で地価下落率が最も大きかったのは、前年に引き続き日本海沿岸の鳥取県米子市角盤町で、10・9%の下落(表2)。前年より下落幅も拡大した。

 

 

 地価が全国で最も高かったのは今年も東京中央区銀座4丁目にある「山野楽器銀座本店」で、1平方メートルあたり5550万円となり、3年連続で過去最高を更新した(表3)

 

 もっとも、伸び率は前年の25・6%から一気に落ちて9・9%と、地価高騰が峠に差し掛かりつつある様相を示している。今年も住宅地、商業地、工業地すべてで、高価格地点1位から10位までを東京都が独占した。

 

(2018/05/07更新)