2019年度税制改正法では、消費税増税後の景気対策として、駆け込み需要後の買い控えを抑える狙いで住宅ローン減税が拡充された。このほかにも空き家の相続特例や個人版事業承継税制で相続税や贈与税が猶予される措置も盛り込まれている。また住宅資金贈与の非課税限度額が拡大されている点も見逃せない。利用できる住宅、不動産の税制をチェックしていきたい。
過去の消費税増税を振り返ると、住宅購入の需要は税率引き上げの1年ほど前から増えていき、半年前にピークを迎えている。それは半年前までに契約すれば、たとえ物件の引き渡しが増税後になっても、旧税率のままとする「経過措置」の対象となるためだ。そしてまさにいま、そのピークの時期を迎えている。
経過措置の期限は過ぎたが、仮に今年の4月以降に契約しても、増税前の9月までに物件の引き渡しを受けられるのなら、税率は8%のままだ。しかし、工事の進捗が遅れてしまって完成が増税後にずれ込めば税率は10%となる。過去の消費税増税時には業者とのトラブルに発展したケースもあった。税率を意識するがあまり、無理な契約をしないようにしたいところだ。今年度の税制改正によって住宅ローン減税などが拡充され、税率が10%であっても、8%税率での契約と比べて負担が軽くなるケースもあるので、しっかりと検討したい。
住宅ローン減税では、消費税率が引き上げられる今年10月から来年末までの間に物件を購入して住み始めたマイホームについては、所得税や住民税の控除期間を現行の10年から13年に延長することになった(表1)。
また住宅ローン減税だけでなく、一定の条件を満たす購入者に一時金を渡す「すまい給付金」や、省エネ・耐震対策に優れた住宅の新築であれば、最大35万円分相当の「次世代住宅ポイント」を受け取ることも可能なので確認しておきたい。
今年度の税制改正では、祖父母や親から相続した空き家を売却した際、最大3千万円を譲渡所得から差し引き、税負担を軽減する特例措置が2020年以降も継続されることとなった。特例を受けるためには「相続の直前まで親が居住」していたことが要件となっていたが、相続直前に被相続人が老人ホームなどに入居している場合も多く、使い勝手の悪さを指摘されていた。このため、相続直前まで自宅に住まずに老人ホームに入っていたケースでも優遇措置が受けられるようになった。
また個人商店や零細企業などの相次ぐ廃業を防ぐための特例措置として「個人版事業承継税制」が創設された。これは10年間の時限措置で、法人でない個人事業主が事業用の建物や設備などを引き継ぐ際の相続税や贈与税の支払いを猶予し、後継者が事業を継続する限り支払わないでいいようになる。土地は400㎡、建物は800㎡までが対象となる。
消費税増税の反動減を意識した特例措置として、住宅資金贈与の非課税限度額が4月から拡大された。父母や祖父母など直系尊属から、自宅を新築、増改築等する資金の贈与を受けた場合、要件を満たせば限度額まで非課税になるというものだ。
通常、暦年課税で年間110万円を超える贈与があった場合、たとえ親子の間とはいえ贈与税の対象になるが、住宅取得資金としての贈与には一定の非課税枠が設けられている。その非課税枠は最大1200万円となっていたが、今年4月から来年3月末までの契約で消費税率10%になる物件を取得する場合には最高3千万円まで非課税枠が拡大される(表2)。実際には、基礎控除の110万円をプラスした3110万円までの贈与が非課税となる。来年4月以降は非課税限度額が少なくなるので、資金贈与による住宅建築を考えるなら、来年3月までに契約を済ませたい。
非課税枠が1200万円と3千万円とでは、贈与税がどれだけ違ってくるかをシミュレーションしてみる。自分の子や孫に3千万円を贈与すると、非課税枠1200万円では、「3千万円―基礎控除110万円― 非課税枠1200万円」で1690万円が課税対象になる。税率は45 %で控除額が265万円になるので、「1690万円×0・45 ―265万円」。つまり495・5万円の贈与税がかかる計算となる。それが消費税増税後に住宅資金贈与を受けて住宅を取得すれば、全額が非課税になる。
(2019/07/02更新)