ふるさと納税は、実質的に自己負担2千円でそれ以上の価値がある地域の特産品を受け取れるという、お得な制度だ。寄付金額から2千円を差し引いた金額は、翌年、所得税の還付と住民税の控除というかたちで戻ってくる。昨年の控除上限額の引き上げで選べる特産品の幅が広がり、利用者は急増している。しかし、「ふるさと納税をすると得」と耳にしていても、なにをどうすればいいのかわからないという人は意外なほど多い。
全国から特産品を〝お取り寄せ〞できるふるさと納税は、思いのほか簡単な手続きで利用することができる。
まず、自己負担が2千円で収まる寄付金額には、その人の年収や家族構成ごとに上限(限度額)がある。税メリットを最大限に受けるためには、この限度額を把握することからスタートすることになる。
ふるさと納税をすると、寄付額のうち2千円を超えた金額が、住んでいる場所で納める所得税や個人住民税から差し引ける。控除額の算出の仕方は、所得税分と住民税分とで異なり、また住民税には基本分と特例分それぞれに別の計算式がある。それらの計算方法はひと目で理解できるものではない。
計算式を目にして敬遠してしまう人は多いが、インターネットを使えばおおよその限度額を簡単に把握できる。「ふるさと納税 限度額」といったキーワードで検索すると、控除限度額を把握するためのいくつかのウェブサイトが出てくるので、そこで目安を確認してふるさと納税をスムーズに進めたい。
総務省の「ふるさと納税ポータルサイト」からは、年収と家族構成、そして寄付額を入力すると自己負担額の目安が自動計算されるエクセル表をダウンロードできる。また、社会保険料や生命保険料、地震保険料、住宅ローン控除額といった、さらに詳細なデータを入力することで、控除限度額の目安をより正確に算出できるウェブサイトもある。最新の給与所得源泉徴収票や確定申告書の控えが手元にあれば、1分もかからずおおよその控除限度額を把握できる。
なお、総務省のポータルサイトには、寄付する人の「年収」と、独身、共働き、子どもの人数といった「家族構成」をもとに限度額の目安を示した資料が掲載されている。これによると、年収が同じ300万円でも、独身者は控除限度額が2万8千円であるのに対し、収入がない配偶者がいる人は1万9千円、共働きで大学生と高校生の子どもが一人ずついる人は7千円と、扶養家族のいない独身者は税メリットが大きいことが分かる。
この時点で算出できる控除限度額はあくまでも概算であり、寄付をする年の収入が確定する年末にならなければ正確な値を出すことはできない。自己負担額を2千円で収めたいのであれば目安より少なめに寄付するようにしたい。
大体の控除限度額が分かったら次は寄付先を決めることになる。
ほしい特産品の種類が決まっている人は、民間のふるさと納税専門ウェブサイトを使い、寄付額や好みにあった各地域の品を選べばスムーズだ。
ウェブサイトには、「肉」や「お酒」、「魚貝類」、「菓子」などの商品ごとに自治体の返戻品がラインアップされている。食べ物以外にも名産品や施設利用券、イベントチケットを受け取れる自治体もある。特産品狙いではなく、その地方の観光、福祉、教育文化などの各種事業に役立てるために支出することも可能だ。
また、お気に入りの観光スポットや身内がいる町といった、応援したい自治体があれば、その自治体名と、「ふるさと納税」というキーワードでインターネット検索することで、それぞれの自治体が用意しているコースを確認できる。
寄付先の選定には難しい知識が必要なわけではない。ただ、あまりにも選択肢が多く、楽しみながら迷っているうちに、たくさんの時間がかかってしまうかもしれない。
寄付の申し込み手段はインターネットのほか、申出書の郵送、FAX、直接持参など、自治体によってまちまちだ。また、寄付金の支払いも、銀行振込、郵便振替、現金持参、クレジットカード払い、コンビニエンスストア払いがある。インターネット申し込みでクレジットカード払いをしてしまえば、10分もかからずに寄付が完了する。
寄付金を支払うと、しばらくして特産品が届く。ここまで、思いのほか手間は少ない。そして、特産品に同封もしくは同時期に送付されてくる証明書を保存しておき、翌年の確定申告の際に添付してふるさと納税の利用を申請すれば税額から差し引かれる。また、もともと確定申告の必要がないサラリーマンなどは、事前に「ワンストップ特例」を申請すれば確定申告する必要もない。
自己負担2千円でそれ以上の価値の特産品を得られる寄付限度額の枠は、毎年リセットされる。その年分の枠を使い切るために、年収がほぼ確定する年末に駆け込みで寄付する人は多いが、年の途中でふるさと納税を利用しても、限度額を超えない限り損するわけではない。
人気の特産品は募集が締め切られることもあるので、早めの寄付が必要だ。いまからふるさと納税をするのであれば、自分がどれだけ寄付したかを覚えておき、年末にプラスで制度を利用するときに限度額を超えないように気を付けたい。
(2016/09/28更新)