お墓の購入は慎重に

増税前の駆け込み需要後には反動減も


 消費税率10%への引き上げを目前にして、駆け込み需要を狙うお墓業界が活況を呈している。生前に購入すれば相続税の節税効果もあり、「どうせ買うなら増税前に」という消費者心理が生まれるのは当然だ。だが、お墓は購入のタイミングを誤ると8%税率が適用されないこともある。


 ご先祖様の眠るお墓に向かって今日の自分があることを感謝し、家族の安泰をお願いして手を合わせる。代々のご先祖様が眠る墓は親戚一同をつなぐ心の拠り所でもある。とはいえ先祖代々の墓に入るという人は少数だ。公益財団法人生命保険文化センターの調査によると、自分が入るべきお墓を所有している人は62%に過ぎず、これから自分の入る墓を探さなくてはならないという人は全体の4割にも及ぶ。

 

 さらに、お墓があると答えた6割の人も親と一緒の墓に入るつもりはないようで、楽天リサーチが行った調査によると、先祖代々の墓への埋葬希望者は3割にも満たない結果となっている。つまり、相当数の人は新規にお墓を用意する考えがあるようだ。

 

 お墓一式の平均価格は150万円から300万円程度。東京23区では300万円前後が相場と言われているが、本紙読者のなかには1千万円を超えるものを購入する人も少なくないだろう。

 

 お墓にまつわる全ての費用が課税対象というわけではないものの、多くの部分を占める墓石代と工事費の消費税額が跳ね上がることから、低い税率のうちに駆け込みで購入したくもなる。

 

 だが、ここで注意したいのは、お墓を購入した際の引き渡しの時期だ。消費税の8%税率が適用されるためには、今年の3月31日までに墓石工事の契約が完了しているか、もしくは増税前日の9月30日までに引き渡しが行われる必要がある。契約書にサインをしていても、それが4月1日以降であれば墓の建立と引き渡しを9月末までに済ませなければ8%税率が適用されない。

 

 そうなると、ますます急いで購入したくもなるが、墓の完成には早くて1カ月、通常は2カ月程度かかる。とくにいまは増税前の駆け込み需要で業者が混み合っている。急いで契約したものの、工事が間に合いませんでしたということも十分にあり得る。「たぶん間に合いますよ」といった業者の言葉を鵜呑みにせず、しっかり確認したい。

 

 お墓にも駆け込み需要があるということは、その反動減もあるということを認識しておくべきだろう。「増税前の駆け込みキャンペーン」といったサービスを展開している業者が目に付くが、かつての消費税増税時の住宅市場などを振り返ると、増税後には反動減対策としての「割引キャンペーン」が行われることも十分に考えられる。税金で得をしようと慌てて購入し、結果として損をしないように重々気を付けたい。

 

お 墓は相続税対策として生前に購入することが多い。相続税法では、墓地や墓石は亡くなる本人が生前に取得したものであれば、相続時に財産から除外されるため、相続財産の総額を減らすことになり節税につながる。お墓のほか、仏壇や仏像、位牌、おりんなどの仏具も対象となっている。ただしローンで購入する場合には、相続開始までに、つまり元気なうちに支払いを完了していることが条件となる。

 

 一般に「お墓を買う」とは言うものの、買うのはあくまでも墓石であり、お寺や霊園に支払う永代供養料は土地の使用料ということになる。そのため所有権は移らないので、購入時の不動産取得税や購入後の固定資産税はかからない。

 

 お墓を買うときの主な費用は、この永代供養料に墓石代と工事費、それに各寺院や霊園によって名称は異なるが、一般的に「管理料」と呼ばれるもので成り立っていると考えていい。

 

 管理料は永代供養料とは異なり、実際にお墓を管理するための費用となる。消費税の課税対象だが、多くは内税であるため、消費税分が金額に乗っていると実感することは少ないだろう。この管理費の支払いが滞ると、いかに「永代」の供養料を支払っていようとも契約解除となり、一定期間を経てお墓は撤去され、遺骨は合祀されることになる。

(2019/09/06更新)