【迷信】(2019年9月号)


東京・中央区の聖路加国際病院は、1902年にアメリカ人の宣教医師ルドルフ・トイスラーによって創設された▼開設当初の建物は関東大震災で倒壊。いまも残る旧館は1933年、日本の皇室や米国聖公会、米国赤十字などの寄付によって再建されたものだ。アントニン・レーモンドら3人のチェコ人建築家によって基本設計が進められ、最終的には米国人のミッション系建築家バーガミニーがこれを引き継ぎ竣工した▼十字架を戴く尖塔が象徴的なネオ・ゴシック様式の教会建築は、ボストンのマサチューセッツ総合病院をイメージしてデザインされたものといわれている。その外観からもわかる通り、院内には礼拝堂が併設されている▼礼拝堂の床のタイルにはハエやネズミ、ノミなどの伝染病を媒介する生物と、迷信を象徴するものとして「アラジンの魔法のランプ」のレリーフが彫られている。そこを行き交う医師や患者は、これらを足で踏みつけて歩くことになるわけだ▼ある民間の調査では、医師の4割超が詐欺や悪徳業者に遭遇した経験があるという。医学を迷信から切り離し、臨床と観察を重んじる経験科学へと発展させてきたドクターも、経営者としては欲が出る。胡散臭い投資話は踏みつけて歩きたいものだ。