【賃上げできない】(2018年5月号)


首相は経団連に対して3%の賃上げを要請している。その一方で2018年度の診療報酬改定は「本体部分」が0・55%のプラスにとどまった。診療報酬は「医師の人件費」ではなく、「医療機関で働く従業員の賃金の原資」となるものだ▼世間では、ドクターと言えば高額所得者であるとのイメージが根強いため、「お医者さんはもともと高給取りだから、0・55%でもいいじゃないか」という声がもっぱらだが、それは大きな誤解。院長先生も中小企業の社長さんと同じ。わずかばかりのプラス改定では、スタッフの給料を上げられない。実際、自らの給与を減額して経営を支えている院長先生がたくさんいるのだ▼「薬価部分」はさらに厳しく、1・45%のマイナスとなった。たしかに高額薬剤の薬価引き下げは必要だろう。しかし、薬剤師を置いてジェネリック薬を主体としている院内処方の医療機関にとっては深刻な打撃となる▼前回の診療報酬改定では、消費税率の引き上げ分を補うためとして「本体部分」が引き上げられた。だがそれは文字通り、「増税分の戻し」でしかなかった。税率が引き上げられる都度、医療機関の〝損税〞負担は増すばかりだ▼賃上げしろと言うのなら、国は医療の消費税を「非課税」ではなく、「税率ゼロ%での課税」とするべきだ。