【〝統計〟の事実】(2019年4月号)


介護用ベッドの手すり部分に、首や手足を挟まれる重大事故が後を絶たない。消費者庁によると2007年以降79件発生し、43人が死亡している。大半が介護施設などでの認知症高齢者による事故だという。安全対策を強化したベッドへの入れ替えが進まないことが背景にあるとされる▼経産省は09年、介護用ベッドに関する日本工業規格を改正。頭や手足が挟まらないよう、手すりの隙間を狭くするなどの安全対策が強化された。それでも重大事故が後を絶たないのは、規格改正前のベッドが依然として利用されているためだ。業界団体の「医療・介護ベッド安全普及協議会」によると、介護用ベッドは高いものだと50万円を超えるという▼東京商工リサーチによると、18年に倒産した介護サービス事業所は106件。倒産件数は3年連続で100件を超えている。経営的に厳しい状況に置かれている介護施設にとって、大量のベッドの刷新は容易なことではない。規格改正から10年を経過しても入れ替えが遅々として進まないのはこのためだ▼生命にかかわるこうした状況を放置していいはずはない。個人が介護用ベッドを購入・レンタルした費用も医療費控除の対象外になっている。「43人死亡」という〝統計〞の事実にこそ、国は真摯に向き合うべきだ。