【経営学的な視点で】(2018年2月号)


厚生労働省にはさまざまな組織が存在する。そのひとつが「社会保障審議会児童部会小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会」。正式名称を書くだけでもたいへんなこの専門委員会が、医療費助成の対象となる「小児慢性特定疾病」に33疾病を追加することを了承した。これで対象疾病数は合計756、患者数は推計で約12万7千人になる▼少子高齢社会。難病に苦しむ子どもたちへの助成が拡大されるのは当然のことだ。ただし、そのためには巨額の費用がかかる▼ならばこうした工夫も必要ではないか。慶大の岩本隆特任教授(経営学)がまとめた研究報告書によると、オプシーボなどの高額な抗がん剤を無駄なく使用すれば、医療費が大幅に節減できるという▼瓶から注射器で取り出すタイプの抗がん剤約100種類を対象に調査した結果、余って廃棄している分が年間738億円に上った。研究では、薬剤師が閉鎖式接続器具を装着すれば別の患者にも利用できると想定。廃棄総額から器具代などのコストを差し引いた抑制額は年間560億円になる計算だ▼難病への助成拡大は必要不可欠。ただし、そのためにほかの医療を削ってしまっては本末転倒だ。経営学で指摘された無駄の削減にも積極的に取り組んでいくべきだろう。