【終の棲家】(2017年8月号)


「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)とは、60歳以上向けの賃貸住宅のこと。バリアフリー構造になっていて、部屋は原則25㎡以上。全国平均の入居費は月額約10万円で、有料老人ホームと比べると安い。約6千の事業者が運営し、約16万人が暮らしているとされる▼国交省の調べによると、2011〜15年度の5年間で倒産などによって廃止されたサ高住は125施設にのぼった。廃業数は増加傾向だという▼入居者が思うように集まらずに、高齢者が入居する前に廃業した施設が64か所、入居後の廃業は61か所だった。15年度だけで45か所が廃業している▼三重県四日市市では15年秋、開設から1年のサ高住が廃業。入居していた人の転居先は自治体などが確保したが、認知症の人ら22人が急な引っ越しを余儀なくされた▼制度上「賃貸住宅」であるサ高住は、行政への登録手続きだけで開設できる。しかし、要介護者の受け皿が不足している状況から入居者の約9割が要介護、約4割が認知症の人で、その実態は介護施設だといえる▼ここを〝終の棲家〞と定め、自宅を処分して入居する人もいる。それが廃業してしまっては、入居者は行き場を失い、介護難民になりかねない。本当に介護を必要とする人の選択肢が、サ高住しかないという現実を打開しなければなるまい。