酉年が終わり、戌年が始まる。商売の格言に「戌亥の借りを辰巳で返す」がある。株式市場では「辰巳天井」という威勢のいい相場格言もある。戌亥の両年に借金をして、子丑寅卯の4年間で事業を拡大し、辰巳の両年にめぐってくる繁盛期で返済すると商売はうまくいくとされている▼酉年までの4年間の相場格言はこうだ。「午は尻下がり」「未は辛抱」「申酉騒ぐ」。がまんの挙句、世情も市況も騒がしくなるという。たしかに酉年の相場はその通りだったといえるだろう▼そしてようやく「戌は笑い」「亥は固まる」となる。ここでの借りを、「子は繁盛」「丑はつまずき」「寅千里を走る」「卯は跳ねる」といった4年間の浮き沈みを経て、「辰巳天井」で返すわけだ▼「犬の子やかくれんぼする門の松」。小林一茶には正月の句が数多くある。「江戸衆や庵の犬にも御年玉」「犬どもがよけてくれけり雪の道」も一茶の句▼一茶が生涯に残した句はおよそ2万2千。そのなかで犬が登場する俳句は280もあるという。一茶の句と犬の写真とがコラボした『犬と一茶』(信濃毎日新聞社刊)という書籍まで出版されているほどだ▼この本に登場する犬の表情は、どれも見ていて幸せな気分になるものばかりだ。これと同じく「戌が笑う」ような、ホッとする1年としたい。