【気が引ける】(2018年11月号)


「先生を信じていないようで気が引ける」―。糖尿病や高血圧、足腰の痛み、そして認知症。長期間、持病の症状が改善しない高齢患者に、家族が「ほかの病院も受診してみてはどうか」などとセカンドオピニオンをすすめても、「気が引ける」といってなかなか行動に移さない▼税務申告でも同じようなことが起きている。先代の頃から続く長い付き合いの顧問税理士の先生がいると、「税金のことはすべて任せっきり」になりがちだ。法人の決算や個人の確定申告ならばそれでいいかもしれないが、税理士にも得意分野、不得意分野がある。相続税対策の経験が少ない税理士が間違った申告をしたために、多額の税金を払うことになり、結果として損害賠償問題にまで発展するといったケースも増えている▼医療の現場では、医師同士が積極的に連携することで、患者の「気が引ける」といった思いを解消できるはずだ。「認知症サポート医」の制度もそのひとつ。かかりつけ医と専門医が連携してひとりの患者を診ると、双方の医師に報酬が支払われる▼「指導料」として数百円、患者の一時的な負担は増すが、不要な薬をやめる機会になれば、結果として医療費を減らせる。医師の側から患者に対し、サポート医の受診を促す必要もあるだろう。