【改革の正体】(2019年12月号)


財務省が、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会で、医療費の自己負担増や診療報酬の引き下げを提言した。増え続ける社会保障費を抑制し、医療保険財政を改善するのが目的だという▼高齢者が支払う医療費の自己負担額は70〜74歳が2割で、75歳(後期高齢者)になると1割に軽減される。財務省は、医療保険制度を支える現役世代と高齢世代の負担のバランスを見直す必要があるとして、75歳になっても2割の自己負担額を維持するよう求めた▼また、すべての世代を対象に、受診時の自己負担額を一律数百円上乗せしたり、処方された医薬品の自己負担額を引き上げたりすることも提案している▼財務省の提言は、患者とその家族に負担増を強いるだけにとどまらない。その矛先は医師にも向けられている。診療報酬に関しては年末に向けて本格化する来年度の予算編成で2%台半ば以上のマイナス改定とすることを求めている▼税と社会保障をセットで見直すとした政府の「税・社会保障一体改革」。その〝改革〞の中身は増税と自己負担増と診療報酬削減のトリプルパンチだったわけだ▼足りなければ増税する、患者の負担は増やす、医者への支払いは削る。これを「一体」で実施することが「改革」だというのならば、なんともお粗末だ。