個人消費が冷え込み、法人による設備投資も活発化しない。だが、景気回復が実感できないこうした状況にもかかわらず、売上高が順調にアップしている分野がある▼国内の医療用医薬品の年間売上高が、昨年はじめて10兆円を超えたという。調査会社IMSジャパンのまとめでわかったもの。病院や薬局などが卸会社から購入した医薬品について、公的価格(薬価)をもとに売上高を算出。昨年の売上高は10兆5900億円で、前年を6100億円上回った。9兆4800億円だった2011年から4年連続の増加だ▼種類別では、がん治療薬の8200億円、高血圧治療薬の5600億円、糖尿病治療薬の5100億円が上位3種。C型肝炎治療薬の「ハーボニー」(昨年9月発売)と「ソバルディ」(同5月発売)の売上高がそれぞれ1100億円に達し、ウイルス治療薬は前年比2・2倍の4900億円となった▼増え続ける医療費を抑制するため、厚労省では2016年度の診療報酬改定から、売れ行きが予想外に伸びて年間1千億円を超えた新薬の薬価引き下げを決定。後発医薬品への転換を促し、「かかりつけ薬剤師」制度によって過剰投薬や残薬が減ることにも期待している▼売上増は結構な話だが、その分、医療費負担も増える。財源確保は増税以外の方法で考えたい。