10年ほど前から地元で在宅医療に取り組んできたという院長先生(『院長のミカタ』のご愛読者)からこんなメールをいただいた。「診療報酬の大幅な減額によって、昨年4月以降の収入がほぼ半減しました」▼平成26年度の診療報酬改定によって、介護施設や有料老人ホームなど「同一建物居住者」に対する「在宅時医学総合管理料」の診療点数が、それまでの約4分の1へと大幅に削減された。「訪問診療料」もほぼ半額に引き下げられ、在宅医療に熱心に取り組んできた医療機関ほど深刻な状況に陥っている▼メールの主は東北のある都市で代々続く開業医。市街地で中規模の病院を経営しているが、10年前からは在宅医療にも積極的に取り組みはじめ、郊外には通所のリハビリ施設も併設。在宅ケア支援の拠点として地域の老人医療に貢献してきた▼メールは続く。「厚労省は〝入院患者を自宅に戻せ〟と言っておきながら、いざ在宅医療が地域に根付きはじめると、その報酬点数を大幅に削減する。これは明らかな矛盾です」▼医師の訪問診療回数が減ったり、在宅医療機関そのものが減少したりすることは、患者の不利益にほかならない。高齢者施設では医療機関へ入所者を送迎する必要も生じる。病院、施設、そして患者とその家族。そのすべてに重い負担を強いるような「在宅医療」では、まったくもって本末転倒だ。