【介護事業者の倒産】(2017年2月号)


2016年の介護事業者の倒産は108件で、過去最多だった15年の年間倒産件数(76件)を上回った。東京商工リサーチが発表した数字。介護報酬引き下げに加え、人手不足による賃金の高騰で小規模業者を中心に経営が立ち行かなくなっている現状が浮かび上がる▼業態別の内訳では訪問介護が48件と最多。デイサービスなどが38件、有料老人ホームが11件となっている。規模別では従業員数が5人未満の小規模事業者が79件と、全体の約7割を占めた▼新規事業者の苦戦も目立つ。参入5年以内の倒産は54件で全体のちょうど半数となっている。特別養護老人ホームと有料老人ホームでは負債総額10億円以上の大型倒産がそれぞれ1件あった。その影響もあり、16年の負債総額は94億600万円と、15年(63億8600万円)から大幅に増える結果となった▼介護保険法は高齢社会化に対応する目的で1997年に制定され、2000年から施行された。介護を必要とする人の「尊厳を保持」し、自立した日常生活を営むことができるようにするための制度だ▼しかし、その担い手である事業者が倒産してしまうようでは施設やサービスの充実は図れない。報酬の不正請求などは言語道断だが、報酬引き下げの議論はもっと慎重になされるべきだろう。