【ダイジョウブ】(2014年11月号)

「大丈夫です」――。頼もしく、安心できる言葉のはずだ。「例の記事、締切りまでに間に合うのか」という本紙編集デスクの問いに対して、若手記者がそう答えていた。間髪入れずに鬼デスクが「本当に大丈夫なのか。お前さんのダイジョウブデスは、アテにならんのだよ!」▼絵本作家、いとうひろしさんの『だいじょうぶ だいじょうぶ』で描かれる「だいじょうぶ」とは、使われ方もニュアンスもまったく違うものになっているようだ▼「ボク」とおじいちゃんはとても仲良しで、毎日のようにお散歩を楽しんでいる。近所を歩くと発見や出会いの連続で、ボクの世界はどんどん広がっていく。でも、世界が広がると、困ったことや怖いことも増えてしまう。ボクが「なんだかこのまま大きくなれそうにない」と不安に思ったとき、おじいちゃんは手を握りしめておまじないのようにつぶやいてくれる。「だいじょうぶ だいじょうぶ」▼やがて「大きくなれたボク」は、ベッドのおじいちゃんの手を握って何度もくり返す。「だいじょうぶ だいじょうぶ。だいじょうぶだよ、おじいちゃん」▼お医者さんや看護師さんが患者に優しく語り掛ける「大丈夫ですか」や「大丈夫ですよ」。この言葉に救われた生命、励まされた家族は少なくないはず。信頼されているからこそ安心を与える「大丈夫」なのだ。