【じつにうらやましい】(2020年6月号)


西側への移動が制限された旧東ドイツで育った。だから国境閉鎖の措置は「極めて限定的であるべきだ」と強調した。雇用を守るためには「可能なことをすべてやる」と明言。自営業者に対して約170万円の支援金を申請から数日で支給している▼メルケル首相のこうした姿勢がドイツ国民に支持されている。国民へ協力を呼びかける演説では「うわさに惑わされず公式発表だけを信じて」と言い切った。政府を信じろと言える首相の存在と、その言葉を信じることができる国民が、じつにうらやましい▼ニュージーランドのアーダーン首相は、結婚について保守的な考えを持つモルモン教の家庭で生まれ育ったが、自身は20代で信仰から離れた。2018年には第一子となる女児を出産。首相在任中の産休取得は世界で初めてのケースとして話題となった。パートナーとは事実婚の関係で、一貫してシングルマザーやLGBTの友人らを支持する立場を示している▼ウイルスに対しては「厳しく、迅速に」措置を講じると説明。事実上の〝鎖国状態〞とすることで感染拡大を防いだ。演説中は終始笑顔で「どうか強くいてください。そして思いやりをもってください」と国民に訴えた。ひとを思いやれるリーダーが存在する国も、じつにうらやましい。