【齢を重ねる】 (2017年9月号)


祝日法の改正により、いわゆるハッピーマンデー制度が実施されるようになったのは平成13年のこと。もう16年も前になるのだが、どうもいまだにしっくりこない。9月の祝日「敬老の日」もそのひとつ。15日ではなく、今年は18日だ▼長老、古老、老師、老体、老公など、「老い」を敬う言葉や呼称は数多くある。その一方で最近では、老衰、老廃、老醜、老害などと、「老い」が負の印象で捉えられていることが少なくない▼いうまでもなく、お年寄りと子どもに優しくない国は栄えない。それなのに、現役をリタイアした人生の先輩たちに対して、この国の社会保障制度は「働かざる者食うべからず」と言わんばかりのものに変わりつつあるのではないか▼働かない人は食べてはならぬ、つまり生きていてはいけないとしたら、働けない人はどうなるのか。高齢者、病人、障害者、そして子どもにも労働を強いるべきだとでもいうのか▼「齢(よわい)を重ねる」とは「弱いを重ねる」ことだと、社会学者の上野千鶴子さんはいう。加齢によって足腰も思考力も弱っていく。どんなに健康であっても、いずれは誰もが「中途障害者」になる▼「働かざる者食うべからず」など、冗談ではない。老巧の先達がさんざん働いてきちんと納税してきたのは、「弱い」を重ねられる社会のため。むしろ、国の老朽化こそが問題なのだ。