【社長の了解は得ている】(2014年9月号)


「社長の了解は得ている」という言葉を、ビジネスの現場ではよく耳にする。問題なのは、社長の知らないところで、社長が了解した覚えもないのに、これが公然と使われていることだ▼「トップからOKをもらっている」。社長が出席していない社内の会議などでこれを使われてしまうと、それ以上の議論にはなりにくい。会社にとって最善の判断を導き出そうとしている会議に「トップの意向」が伝えられれば、ほとんどの場合、そこで〝思考停止〟の状態になってしまうだろう▼これが本当に「社長の決断」ならば、結果がどうなろうと問題はないのだが、社内コミュニケーションを省略して乱暴にことを進めたいだけの担当者らによって、社長が出した覚えもない「OK」が悪用されているのだとしたら、これほど危険なことはない▼担当者は事業の日程や予算を計画通りに進捗させたいがために、「社長の了解」を持ち出す。まったくのデタラメというわけではなく、「社長から伝えられたニュアンスを自分に都合よく拡大解釈するとOKをもらったようなもの」というレベルだ▼社長は、自分と現場の間に介在する幹部社員らが「社長の了解」を濫用していないか注意したい。同様に、得意先企業や業界団体、監督官庁に張り付かせている担当者が、「先方の意向」として伝えてくる内容についても慎重に吟味したい。ミイラ取りがミイラになっている可能性もゼロではないのだ。