【故郷】 (2018年2月号)


「こちらは広報〇〇(市区町村名)です」などのアナウンスからはじまるお馴染みの放送。市役所や町役場が設置するスピーカーから流れてくるあの放送は「防災行政無線」によるもの。東日本大震災では津波が庁舎へ迫ってくる中、懸命に避難を呼びかけ続けた女性職員が犠牲になった。文字通り地域の住民を守る〝命の放送〞だ▼毎年利用者が増加し続けている「ふるさと納税」。「応益負担の原則」などと言うなかれ。昨年末も返礼品を目当てに駆け込みでの寄付が殺到したようだ▼寄付金の使途を指定できる自治体も多い。寄付をするひとが教育・育児・医療・福祉・産業振興・環境保全などの中から使ってほしい分野を選択する▼昨年夏、太平洋岸のある町を訪れ、数日滞在する機会に恵まれた。美しく青い海と空、白砂の浜辺、そして豊富な海の幸。夕方になると防災行政無線で「われは海の子」の曲が流れてくる。しかし、スピーカーが老朽化しているのか、音が割れたり途切れたりすることがあった▼その自治体へふるさと納税した。「防災、とくにスピーカーの補修・保全に使ってください」と要望。と、ここまで書いていたら東京・池袋にも懐かしいメロディーが流れてきた。長くこの街で働いているが、きょうはじめて、豊島区のその曲が「ふるさと」であることに気がついた。