【囚人のジレンマ】 (2018年7月号)


2人の共犯者。証拠もあり、誰がどう見ても完全にクロ。それぞれを別室に移して取り調べることにした検察官がこう告げる。「このまま黙秘していると2人とも懲役3年の刑が確定する。君が率先して自白すれば懲役1年に減刑してやる。隣室の相棒は10年の刑だ。ただし相棒だけが自白して、君がこのまま黙秘を続ければその逆とする。2人とも自白すれば揃って5年の刑になる」▼この場合、自白してしまうのが最良の判断(絶対優位の戦略)。揃って黙秘を続けていれば互いに3年の刑で済んだというのに、結果として2人とも5年の刑となる▼それぞれの立場で最良の判断をしたのに、最良の結果にならない。これを「囚人のジレンマ」という▼ライバル店との熾烈な値下げ合戦などは「囚人のジレンマ」そのもの。国際関係における核兵器の開発や保有も、相手国が裏切るかどうかといった心理の延長で、もとは「囚人」と同じレベルだ▼「当店より1円でも安い店があれば値引きします」と、家電量販店が自ら掲げる自主ルールなどは、じつは競合店同士が価格競争の終結を宣言しているようなもので、ある種のジレンマ回避といえる。相手が裏切らないように厳しい報復や制裁を用意するのではなく、核軍縮も「他国よりも核弾頭が1発でも多い場合には廃棄させていただきます」とやってもらいたい。