【反面教師】 (2021年3月号)


例えば営業の現場でトラブルが発生。社長が営業部長に報告を求めると「いま、部下に調べさせています」との返答。例えば工場で事故が発生。社長が工場長に報告を求めると「まだ現場を見ていないのでよくわからないです」という答え。社長の次の一言はこうだろう。「バカもん。すぐに自分の目で確認してこい!」▼営業部長も工場長も、その業務部門の責任者。誰よりも現場に詳しい専門家だ。過去にいくつもの修羅場を潜り抜けてきているのだから、その経験と知識で的確な対処ができるはず。だから「お前が実際に見てこい」という社長の指示は当然だ▼一方、トップ自らが渦中の現場に赴くことの是非は時に議論を呼ぶ。思い出すのが原発事故発生の翌朝に福島へ飛んだ菅直人元首相の行動。事故の初期対応に追われる現場を、素人が視察しても邪魔なだけだ▼菅義偉首相は昨年末、コロナ治療の最前線である国立医療機関を訪れた。こちらは「医療の現場を実際に見てくれ」という要請に、ようやく重い腰を上げたもの。首相は視察したその日、GoToトラベルの全国停止を発表。そしてその夜、大人数でステーキ会食した▼経営トップは、自分の代わりに専門家を派遣するべきだったカンさん、そして専門家会議や担当大臣に丸投げして現場を見ようとしないスガさんを反面教師としたい。