「五指のこもごも弾くは捲手の一挃に若かず」とは、5本の指がばらばらに弾く力は握りこぶしの一撃に及ばず、個々の力では一致団結した力には敵わないというたとえ。前漢時代に編まれた哲学書『淮南子』の「兵略訓」にその記述がある▼限られた軍資金を逐次投下したり、兵力を小出しにしたり、多方面の戦線へ分散配置したりしていては、敵にとって各個撃破の好餌になってしまうと説く。ビジネスでも事業の将来性と収益性を見極め、そこに資本とマンパワーを投入していくことが肝心なのだから、常に「選択と集中」の判断を迫られている中小企業経営者にも共通する〝兵略〟だといえるだろう▼『後漢書』には「五倫十起」とある。清廉で公平な役人の「五倫」さんは、一晩に十回も起きて兄の子の見舞いにいくが、それでも家に帰れば安眠できる。だが、自分の子が病気になれば心配で眠れない。だから、誰にだって私心があるものだ、という故事▼経営者なら当然、自分の会社が大事。同業他社や系列会社と団結することの重要性は認識しつつも、自社の利益を最優先させるのは当たり前のことだ▼さて、『社長のミカタ』は「五里霧中」で創刊し、手探りで発行を重ねて「創刊五周年」。ご愛読に「五体投地」で感謝し、これからも読者とともに「五風十雨」の豊作を目指したい。