第3代アメリカ合衆国大統領で、「アメリカ独立宣言」の起草者のひとりでもあるトーマス・ジェファーソンはこう言ったとされる。「腹が立ったら十数えなさい。とても腹が立ったら百数えなさい」。コロナ禍でストレスがたまり、ついイライラしてしまいがち。そんな現代人に対して、怒りを制御する手法を説いた格言のように聞こえるが、200年以上前の言葉だ▼異なる価値観や行動を認めない同調圧力による不寛容と、自己の権利を主張して協調的行動を受け入れない不寛容。どちらも行き過ぎてしまえば衝突するほかない。コロナ禍にあっては、航空機内でのマスク着用をめぐるトラブルや、感染者・クラスター発生店舗などに対する誹謗中傷行為など、さまざまな場面で不寛容と不寛容の衝突がみられる▼コロナ治療の最前線で感染の危険にさらされながら献身的に働く医療従事者。その姿に感謝はしても、保育園では「病院関係者の子どもは預かれない」と断る。保育の現場も深刻だ。多くの企業は在宅ワークを取り入れているが、保育園はそうはいかない。休めない人と休めない人が衝突してしまう仕組みは、あまりにも殺伐としている▼怒りを感じたらまず深呼吸し、とりあえず十数えるようにしたい。分断を煽ってばかりいる第45代の大統領にも、ぜひカウントしてもらいたい。