「ポイント・オブ・ノー・リターン」という言葉をご存知だろうか。研究社刊『新英和中辞典』によると「帰還不能点(飛行機がもはや出発点に戻る燃料がなくなる点)」「もはや後に引けない段階」という意味だそうだ▼第二次世界大戦へと突き進んだ戦前のある時期や、戦線を際限なく拡大したために補給が滞るようになった開戦後のある時期などが、まさに「ポイント・オブ・ノー・リターン」であったといえるだろう▼株式市場など、投機の世界でもこの言葉は使われるらしい。市場関係者によると「最初からこのポイントを設定している投資家は相場で大ケガをしない」そうだ。「ここまで行ったら引き返さない」「その手前でアクシデントがあったら引き返す」と、明確なポイントを自ら設定して投資に臨んでいるから決断が早く、結果として大きな損失を出さないのだという▼中小企業の社長さんは毎日が決断の連続。パイロットと同様、あるいはそれ以上に、この「ポイント・オブ・ノー・リターン」を意識して会社を運営している▼経営者にとっての「燃料」とは事業資金にほかならない。資金調達の予定に狂いが生じたり、売上が計画通りに伸びなかったりすると、あっという間に「帰還不能点」をオーバーしてしまう▼フライトプランを台無しにしないためにも、燃料計算には細心の注意を払いたいものだ。