【ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ】(2016年4月号)


痩せこけた愛馬ロシナンテにまたがり、従者サンチョ・パンサを引き連れて各地を旅するドン・キホーテ。彼がこの光景を見たら、それでも勇敢に戦いを挑むのだろうか▼福島県郡山市の「郡山布引高原風力発電所」。会津布引山を中心とした標高約1080メートルの台地状の高原に33基の風車が林立する。風車は高さが100メートル、羽根の長さが30メートルという巨大なものだ。一般家庭約3万4千世帯分の消費電力に相当する6万5980キロワットの出力は国内最大規模を誇る▼震災・原発事故以降、クリーンエネルギーへの関心が高まっているが、日本では太陽光発電を重視してきた歴史もあり、欧米諸国に比べて風力発電の普及が進んでいない。台風や落雷に耐えうるだけの風車を設置するには多大なコストがかかることや、そもそも設置できるだけの平地の確保が困難なためだ▼風力発電は、国のエネルギー対策特別会計からの補助金をもとに推進されてきた。しかし、その6割が採算割れの赤字状態。原因は設備の破損や風量不足による稼働率の低さにあるが、補助金の獲得を目当てにした開発企業の思惑や、自治体側のコスト意識の低さ、そして国による審査の形骸化も背景にあるとされている▼批判精神に富んだセルバンテスが日本の電力政策を知ったら、主人公にはどんな行動をとらせるのだろうか。