現在、65歳以上の高齢者人口の16%にあたる約550万人が公的な介護保険の要介護(要支援)認定を受けている。
高齢者の介護に直接かかる費用のほか、家族らによる日常的なケアなど、認知症にかかわる社会全体の負担(社会的コスト)は、厚生労働省の推計によると年間約14・5兆円に上り、家族の介護負担がその4割を占めているという。
介護をする家庭には大きな負担を強いる社会となっているが、その負担を少しでも軽減させるため、介護保険を利用して支払った負担額が一定額を超えると払い戻される「高額介護サービス費」という制度を知っておきたい。
支給額は1人単位ではなく世帯単位で計算されるので、世帯に複数の要介護者がいる場合は合算することができる。収入の多い順に区分され、自治体によって差はあるが①現役並み所得者に相当する人がいる世帯は4万4400円、②世帯内の誰かが市区町村民税を課税されていれば3万7200円、③世帯の全員の市区町村民税が非課税であれば2万4600円、④生活保護を受給していれば1万5000円――を超える介護費が還付される。
住宅改修費や福祉用具購入費、介護保険施設での食費や居住費などは、高額介護サービス費支給制度の対象外となる。どれだけ高い介護費用を支払おうとも、支払ったひとが自ら申請しなければ支給は受けられない。つまり「知らない者が損をする」ということだ。
総務省統計局の2015年9月末のデータによると、65歳以上の人口は3384万人、総人口に占める割合は26・7%で過去最高を記録している。そして80歳以上の人口が初めて1000万人を超えた。「知らない者が損をする」ということがないよう、いまある制度をよく知ったうえで、フルに活用していきたい。(2017/07/02)