駐車違反の罰金の処理

レッカー移動は損金算入が可能


 駐車違反の罰金は、かつては運転者だけが払うものだった。しかし、2006年の道路交通法改正で「放置違反金」という制度が登場し、現在では運転者が払わない場合には、車検証に記載された「所有者」が罰金を払うことになっている。これが社用車であれば、その所有者、つまり会社が支払い義務を負うことになる。

 

 もし従業員が業務時間中に駐車違反でキップを切られてしまったら、会社としてはどう対応すべきか。「業務中の交通違反の罰金は会社が払わなければならない」という法律の規定があるわけではないので、従業員の違反に対する罰金を払ってあげるかどうかは会社の判断による。

 

 もっとも、客回りをメイン業務とする営業マンなどは、どうしても路上駐車をしがちになってしまうこともあり、従業員によほどの過失がない限りは会社負担としているケースも多いのではないだろうか。

 

 社用車の交通違反で発生した反則金やレッカー費用を会社が負担した場合の会計処理には、「業務上の必要性」が大きく関わってくる。例えば交通違反の内容が業務の遂行に関連があると認められれば、会社が負担した交通反則金は、会社自身に課せられた罰金と同様に取り扱い、損金には算入できない。その理由は、罰金を損金として認めてしまうと違反者に対する罰則の効果がなくなるからだと言われる。

 

 ただしレッカー費用については実費負担という意味合いから罰金扱いにはならず、損金算入が可能だ。一方、交通違反の内容が業務の遂行に関連ないものであれば、罰金は駐車違反した個人が負担すべき費用ということになる。レッカー費用も同様で、これらの支出を会社が負担すると、その従業員への「給与」とみなされる。もちろん給与である以上は従業員個人には所得税が課されるが、会社としては損金算入できる支出となる。

 

 注意したいのは、罰金を肩代わりしてもらったのが役員だと、臨時の「役員報酬」扱いとなってしまうことだ。この場合、肩代わりした罰金やレッカー代は会社の損金に含められず、役員の所得税も増えることとなるので気を付けたい。(2020/09/16)