震災・原発被害でも固定資産税そのまま?

課税取り消しの判決


 福島県いわき市のゴルフ場「いわきプレステージカントリー倶楽部」は、2011年3月11日から営業ができなくなってしまった。理由は言うまでもなく東日本大震災と、それに伴う東京電力福島第1原発事故だ。

 

 原発から30キロのゴルフ場は一部が放射性物質に汚染され、現在に至るまで営業を再開できていない。客が呼べない以上、固定資産としての価値は当然ガタ落ちだが、それでもいわき市は、このゴルフ場に事故前と変わらぬ固定資産税評価額2億円をつけ、それを基にした固定資産税を課した。

 

 ゴルフ場は「事故後の資産価値は1400万円を超えない」と再審査を申し立てたが、市側は「事故による営業損失は東電に損害賠償を請求すべきで、2億円という評価額自体は適正だ」と拒否。最終的にゴルフ場側は司法に訴え、その判決が1月23日に下された。

 

 判決は、市の課税処分を違法として課税のほぼ全額を取り消すというもの。判決では「利用者数に依存する建物の需要が休業中は見込めず、市場評価額も低下している」と判断された。

 

 司法が「商業施設の需要減は固定資産税評価に影響する」という判断を示したのはこれが最初ではない。16年12月には、観光客が大きく減った温泉旅館に対して、「観光客の著しい減少は家屋の市場価値を低下させる」として、15%の減額を自治体に命じた地裁判決が下されている。しかしその後の高裁判決では、「同じ温泉街でも経営を続けている旅館も複数ある。観光客や宿泊施設が減ったことによって、ただちに建物の価値が減少するとは認められない」として、訴えを退けている。

 

 いわき市のゴルフ場についても、市が控訴すれば二審で司法判断が覆される可能性も十分にある。多発する固定資産税の過徴収によって納税者の意識が高まっているせいか、近年では評価方法そのものの是非が裁判で争われるケースが増え、地裁と高裁で判断が分かれることも珍しくない。

 

 自治体側が税額を計算して一方的に納税者に通知するという「賦課課税方式」のもと長年処理されてきた固定資産税だが、その足元は揺らぎつつある。(2018/03/28)