貸倒損失の処理に注意

〝赤字づくり〟とみなされないように


 回収不能の売掛金や貸付金を貸倒損失として処理するには、その全額が回収不能であることが客観的に明らかでなくてはならない。そのため金銭債権について担保があれば、その担保物を処分した後でなければならず、また保証人がいる場合には、保証人に請求したうえで回収可能性の有無が判断される。

 

 一定期間にわたり取引がない相手の貸倒損失については、取引停止から1年以上経っていることに加え、取立費用が債権額より多く、督促しても弁済がない状態でなくてはならない。この場合「1円」の備忘記録を残し、貸し倒れとして損金経理することが認められている。かなり厳しい要件だが、貸倒損失の経理処理は損失項目であり、状況によってはその赤字ひとつで利益が圧縮され、結果として〝節税〟になってしまう可能性もあるためだ。

 

 赤字づくりのための貸倒損失を偽装する不届き者もいるようだが、そうした行為はもちろん論外で、きついお咎めを覚悟しなくてはならない。

 

 顧問税理士に「利益が生じた時に損失処理したいのだが」と相談するケースも少なくない。しかし、貸倒損失の計上については、「貸し倒れが生じた日の属する事業年度に限られる」とした裁決もあり、いい加減な処理は禁物だ。

 

 なお、関連企業への債権放棄は、それが寄付金として判断される可能性があるので注意が必要だ。近年、当局はグループ企業を使った赤字づくりや租税回避に特に目を光らせている。たとえ後ろ暗い気持ちがないとしても慎重さが求められる。(2019/06/05)