諸経費が安い合同会社

使い勝手よく株式会社化も可能


 会社設立にあたり、合同会社という選択肢ができてから10年以上が経過した。制度開始の当初は、一般になじみがないため信用力が劣るイメージもあったが、最近は知名度も上がり活用の仕方も広がってきているようだ。

 

 合同会社は株式会社のように経営と資本(出資)が分かれていない。お金を出した人(出資者)を「社員」と呼び、出資者が経営も行う。そのため株式会社よりも組織がシンプルで、設立や運営に必要な手続きが簡素に設計されている。

 

 まず、株式会社を設立する際は定款を作成して公証役場で認証を受ける必要があるが、合同会社では定款の認証が不要なため、この手数料(約5万円)が不要となる。また登録免許税も株式会社では最低15万円かかるところ6万円(下限)で済むため、司法書士や行政書士に手続きを依頼しても、報酬込みで株式会社のよりも安く設立できる。

 

 さらに、合同会社は「社員」の任期がないため、株式会社の役員改選(重任)時にかかる登記手続きが不要。また、決算公告の必要もない。このほか、合同会社では増資の際に資本金に組み入れる額を自由に決められることから、増資した全額を資本剰余金に計上すれば、増資の際に登記をしないで済む。

 

 こうした諸費用の軽減のほかに、分配の自由という面も株式会社とは大きく異なる。株式会社で稼いだ儲けは、基本的に株式の数に応じて各株主に分配されるが、合同会社では社員間で決めた比率で分配することができる。会社への貢献度などを考慮して、100万円出資した社員と1万円しか出資していない社員が同額の配当を受けることも可能だ。

 

 さらに、合同会社の社員には、個人だけではなく、株式会社などの法人もなることができるので、優れた技術力を持つ研究施設や豊富な資金力がある法人を社員とすることで、それぞれの強みを出し合う形を取ることができる。

 

 もちろん、個人・法人を問わず有限責任であるため、仮に会社が倒産しても、出資額以上の責任はない。合同会社は総社員の同意により、株式会社へ変更することができる。そのため、最初は使い勝手の良い合同会社として事業を進め、規模拡大が必要となったときに株式会社化するという方法もあるだろう。(2018/10/16)