「子孫の為に美田は残さず」とは、一般的に、子孫の自立のためには良い財産をあえて残すべきではないという意味が込められているとされる。
資産家のAさんが、この言葉の通りに、自分の財産をわが子に残すべきではないと考えたとする。子どもが将来的に法定相続人になれば財産を受け取る権利が発生してしまうので、その前に相続権をなくす方法を調べたところ、遺言などによって権利をはく奪できる「相続人の廃除」という制度があることを知った。Aさんは相続人の廃除を適用できるのだろうか。
結論から言えば、「子どもの自立のため」という思いだけでは相続人の廃除は適用できない。そもそもこの制度は、親を虐待する子や著しい非行を行う子の相続権を奪うものであり、よほどひどい相手でなければ廃除できない。家庭裁判所が虐待や非行の事実を確認してようやく適用できるハードルの高い制度だ。自立してほしいという思いで、子どもの将来の相続権を奪うことは不可能ということになる。(2018/12/13)