土地や建物を売却した際には、購入時の価値、「取得価額」との差に譲渡所得税が課される。正確な税額を計算するためには取得価額を把握することが必要だが、土地付き建物などの売買契約書には土地・建物の「総額」だけ表示されていることが多い。
総額表示の物件価格から、どうやって土地と建物のそれぞれの価格を見分ければいいのだろうか。最もシンプルなのは固定資産税評価額を使う方法だが、税務署に根拠を持って説明できる合理的な価格が他にあれば、必ずしも固定資産税評価額を使って案分する必要はない。
例えば、不動産鑑定士などの専門家による評価を参考にする方法が考えられる。少し注意が必要なのが「借地権付き建物」の場合だ。借地権付き建物の場合、建物の取得価額はその建物の時価相当額となる。そして支払った総額とその建物の時価相当額との差額が、借地権の価額となる。なぜ所有権の土地・建物と同じように、それぞれの固定資産税評価額に基づいた案分ではいけないかというと、そもそも借地権には固定資産税の評価額というものがないためだ。
借地権付き建物については、「その取得価額の総額のうち、借地権の対価と認められる部分がおおむね10%以下であれば、強いてこれを区分しないでもよい」というルールもある。例えば借地権付建物の売買価格が1億円で、借地権の評価が1千万円以下であれば、借地権と建物に案分せずに1億円全額を建物の取得価額とすることができる。(2020/04/27)