銀行融資や株価操作のために、悪化した財務状況を隠して経営が健全であるように見せかける粉飾決算。一時的にはごまかせたとしても、それで本当に業績が好転することは少ない。
2019年に、粉飾の末に倒産した件数は85件で、前年の67件から増加した。そのうち負債総額10億円以上の倒産が33件あり、前年を43%上回る結果となった。
粉飾は利益を小さく見せることによる脱税に比べ罪悪感が少ないのか、大手企業でも手を染めることがある。だが、粉飾のリスクは非常に大きく、刑事罰では役員個人に10年以下の懲役もしくは1千万円以下の罰金、またはその両方という重い罰が用意されている。法人は7億円以下の罰金だ。さらに民事では役員、法人ともに損害賠償責任が問われる。さらに上場企業には上場廃止などの処分もある。
ただし、本来より多くの儲けを税務署に申告しているので税金は「過大納付」になっている。そのため、粉飾決算がバレて多くの罰を受けた経営者としては、せめて多く納めた税金だけでも取り戻したいと考えるようだ。
通常、多く納め過ぎた税金は、一定の手順を踏めばすぐに還付を受けられることになっている。しかし、故意に粉飾をした会社に対しては、そう都合よくはいかないルールとなっている。
その理由は、利益を上積みした決算書で銀行から融資を受けたあとで、税務署に請求して還付金まで受け取るといったインチキができることになってしまうからだ。粉飾などの仮装経理をした会社には、納め過ぎた税金について5年程度をかけなければ取り戻せないというルールが適用される。粉飾によるデメリットは計り知れないほど大きいということだ。(2020/07/22)