全国で増え続ける空き家の発生を抑制するため、被相続人が1人で住んでいた自宅を相続開始の日から3年以内に売却すれば、譲渡所得から3千万円を控除できる特例がある。1981年5月3日以前に建築されたもので、売り値が1億円以下、さらに建物が区分所有ではないことなどが条件だ。
相続人がこの特例を受けるためには、売買契約をするまでに2つのことに気を付けなくてはならない。まずは被相続人が死亡してから売却するまで、その家を何の用途にも使ってはならないということだ。
たとえ家賃を取らずに親戚の大学生を下宿させていたとしても、条件を満たさないことになってしまう。空き家のまま何の用途にも使っていなかったことの証明のためには、被相続人の自宅がある市区町村に「被相続人居住用家屋等確認書」を交付してもらう必要がある。
もうひとつは、空き家となっている建物を売主が解体し、更地として売却することだ。古家付きの土地として建物が残った状態で売買契約し、買主が解体するケースではこの特例を受けられないので注意したい。
建物を解体し、滅失登記をして更地にしたことが分かる写真を撮っておくとよい。なお、家財を処分した費用や建物の解体費は、譲渡費用として譲渡益から差し引くことができるので忘れないようにしたい。
もちろん、更地にしてからも売買完了までの間に駐車場として利用したり、資材置き場などとして貸したりすれば、特例の要件には該当しなくなる。使用していないことの証明はなかなか厄介ではあるが、3千万円の控除は複数の相続人それぞれに適用されるので面倒でもしっかり要件を満たしたい。
仮に相続人が2人で売却後の譲渡所得が6千万円であれば税金はかからない。なお、どちらかが単独で建物を相続した場合、建物を相続しなかった人は適用を受けることができない。(2020/12/21)