税務調査で横領発覚

延滞税や重加算税の対象に


 税務上で考えるべき「横領」は、大きく二つに分類される。まずは、売り上げた代金をポケットに入れてしまう「売上金の着服」。そして相手に支払う経費より多めの金額を会社に出させて差額をポケットに入れる「経費の水増し」だ。これらは、売上の過少計上もしくは経費の過大計上となるため、正しい額との差額について修正申告による調整が必要となる。

 

 一方で、会社としては横領による損失発生と同時に損失額と同額の損害賠償請求権を取得することから、同額の益金が生じることとされる。仮に横領が従業員によるもので、その資金力から回収が困難とみられる場合でも、回収不能であることが客観的に明らかでなければ、横領の時点で貸倒損失として計上することはできない。

 

 横領事件が法人にとって不幸でしかないのは、横領によって修正申告や増額更正となれば、それは会社による仮装隠ぺいとされて延滞税や重加算税の対象となってしまうことだ。会社には役員や従業員に対する監督義務があり、その行為は会社の管理下で行われたとされる。不正を暴けなかったのは会社に非があるということだ。

 

 もちろん、完全な防衛策をとっていたにもかかわらず、それを上回る巧みさで横領が行われ、会社にまったく非がないと立証できれば重加算税が課されない可能性もあるが、その立証はかなり困難だと思ったほうがいい。なお、横領が税務調査によって発覚したものでないときに自主的な修正申告をすれば、原則として加算税は課税されない。(2018/10/19)