社用車で駐車違反

罰金は誰が払う?


 「都内の駐車場を全部合わせても走っているクルマの台数に足りない」などと言われてしまうのが都会の駐車場事情だ。社用車で向かった先にクルマを停める場所が見つからなかったり、あるいはようやく空きを見つけても目的地まで長い距離を歩かなければならなかったりという理由で、周囲の目をうかがいながら路上駐車したことがあるひともいるだろう。

 

 そして数十分後には、フロントガラスに貼られた駐車違反のステッカーを見て「ほんの短い時間だったのに……」と後悔することになる。

 

 駐車違反の罰金は、かつては運転者だけが払うものだった。しかし、2006年の道路交通法改正で「放置違反金」という制度が登場してからは、運転者が払わなければ車検証に記載された「所有者」が罰金を払うこととされている。社用車であれば、会社がその所有者ということになる。

 

 「業務中の交通違反の罰金は会社が払わなければならない」という規定があるわけではないので、従業員の違反に対する罰金を払うかどうかは会社の方針による。とはいえ業務によっては、どうしても路上駐車をしがちになってしまうこともあり、よほど従業員に過失がない限りは会社負担としているケースもあるだろう。

 

 業務上の必要性は、社用車の交通違反で発生した反則金やレッカー費用を会社が負担した際の損金算入の計算にも、大きく関わってくる。例えば交通違反の内容が業務の遂行に関連があると認められれば、会社が負担した交通反則金は、会社自身に課せられた罰金と同様に取り扱う。罰金を損金として認めてしまうと違反者に対する罰則の効果がなくなるので、損金不算入となるわけだ。

 

 一方、交通違反の内容が業務の遂行に関連がないのであれば、罰金は駐車違反した個人が負担すべき費用ということになる。そのため罰金を会社が負担すると、その従業員への「給与」とみなされ、会社にとっては損金算入が可能だ。ただし注意点が2つあり、給与である以上は従業員個人には所得税が課される点と、罰金を肩代わりしてもらったのが役員だと「役員報酬」扱いとなって損金には含められない点には気を付けたい。

 

 なおレッカー費用については、実費負担という意味合いから罰金扱いにはならず、業務に関係があれば損金算入が可能だ。(2018/06/12)