コロナ禍での確定申告。毎年この時期に増えるのが、税務署員を装った「振り込め詐欺」だ。言うまでもなく、国税局や税務署が税金の振り込みや還付金の支払いのために銀行の口座番号を聞き出したり、ATMの操作を求めることは絶対にない。
近年では現金を直接狙うだけでなく、勤務先や取引銀行の情報を問い合わせる事例、未公開株や社債の取り引きに関連して銀行の口座情報を聞き出そうとする例など、さまざまな被害が報告されている。
また電話だけでなくメールによる詐欺も増えていて、国税庁は毎年この時期になるとホームページ上で注意を喚起する文章を掲載している。
振り込め詐欺の手口は複数人がそれぞれ税務署、警察、金融機関を装うなど複雑さを増している。「自分だけは大丈夫」などと思わずに、疑ってかかる心構えが求められる。本物の税務職員が税務調査や滞納整理を行う場合には、必ず顔写真のある身分証明書を携帯している。少しでも怪しいと思ったら身分証明書の提示や、税務署へ直接問い合わせるようにしたい。
本当に税務署からの連絡であったとしても、一度「顧問税理士に相談して折り返し連絡します」と答える習慣をつけておくことも詐欺被害の防止には役立つ。詐欺ばかりは、いかに税理士が有能であろうとも、納税者本人が気を付けていなければ防ぐことはできない。
また詐欺の被害は盗難などと異なり、雑損控除などの救済手段も適用されないので、被害に遭ってしまっても例年通りに税務申告しなければならない。詐欺の手法は年々新しく、また高度化しているため、重ねて言うが「自分だけは大丈夫」と思い込まず、不審な点がなくても必ず家族や顧問税理士、あるいは警察などに確認することが重要だ。(2021/02/19)