国税庁が、2019年7月から20年6月までの1年間に実施した税務調査の実績を発表した。それによると所得税の実地調査は5万9683件で、期間の半分がコロナ禍であったにもかかわらず6万件に近い調査が行われていた。このうち、高額、悪質な脱税などに時間を掛けて数週間から数カ月かけて取り組む「特別調査」と、下調べの上で数日かけて現場で調査を行う「一般調査」が合わせて4万件超実施されている。そして、残りの1万7千件で行われているのが「着眼調査」という手法だ。
「着眼調査」とは、半日程度で終わるものを指す。当然、特別調査や一般調査に比べれば調査官の突っ込みも深くはないが、かといって「半日の調査であれば怖くない」と考えるのは早計だ。
今回発表されたデータによれば、「特別・一般調査」で申告漏れなどの非違を指摘された割合は89・3%と非常に高いが、「着眼調査」でも72・9%が申告漏れなどを指摘されている。
文書や電話によって来署依頼するなどの方法によって申告を修正させる「簡易な接触」での指摘率は57・2%となっているので、実際に調査官が現場までやってくるとなると〝指摘率〟は上がることが分かる。追徴税額も調査によって大きく変わり、「簡易な接触」の1件当たりの平均的な追徴税額は4万円ほどだが、これが「着眼調査」になると27万円になり、「一般・特別調査」では222万円に膨れ上がる。
調査に来られた時点でほぼ4人に3人、半日以上かかるようなら10人に9人が何らかの指摘を受け、これだけの追徴課税を食らうわけだ。なお、これらの税務調査の種類は、あくまで国税当局内部での分類であり、調査の通知で「今回は着眼調査です」などと教えてもらえるわけではない。(2020/12/25)