現金以外の「物納」が可能な税金は相続税だけだ。しかし物納の申請件数、許可件数は、ともに減少傾向にある。1999年には7075件の申請があり4713件が許可されていたが、2018年は申請99件、許可47件となっている。
物納制度は2017年度の税制改正で見直されているのでおさらいしておきたい。物納は、現金以外のどのような財産でも納められるというわけではない。物納する財産には順位があり、第1順位のなかで納められる財産があれば納め、なければ次の第2順位のなかから納められるものを探すという手順を踏む。
17年改正では、その順位の中身が改められた。それまで第2順位とされていた社債・株式等の有価証券のうち、金融商品取引所に上場されているものなどが第1順位となった。
つまり改正前は、財産に土地と上場株式があれば、必ず土地から先に物納に充てなくてはならなかったが、改正後は土地と上場株式が同順位となったため、どちらかを選択することが可能になったわけだ。
上場株式の価値は原則的に「相続が発生した日」の価格で評価される。そして物納財産として利用する際の評価額も「それに準ずる」とされている。つまり、相続発生の直前に現金を上場株式に換えておくと、相続発生から相続税の申告までに株が値下がりしても、相続発生日の株価で物納できる。逆に値上がりしていれば、株を売却して相続税を納付すればよい。株が値上がりしようが値下がりしようが、損はないということだ。
もちろん、物納には延納などをしても現金で納付できない事情がなくてはならないため、万能な節税策というわけではない。(2020/07/20)