株式売却による譲渡所得は、売却額から取得費(取得時の時価)と売却手数料を差し引いて計算するのが通例だ。しかし、相続で取得した株式を売却するときは、売却する相続人が取得したときの時価ではなく、被相続人の取得時の時価を使って譲渡所得を計算する。
被相続人が株式取得のためにいくら払ったかについては、被相続人が取引していた証券会社が交付する「取引(売買)報告書」に記されている。仮に取引報告書が見つからなくても、証券会社には取引報告書の写しを10年間保存する義務があるので、その期間内なら証券会社に問い合わせれば確認できる。それでも取得時期や価格を把握できなければ、預金通帳や日記帳などの覚え書きで確認する方法も認められる。
どうしても取得価格が分からなければ、譲渡収入金額の5%を取得価格とみなして申告する。株式の売却価格が300万円ならその5%の15万円が取得費になり、差額に課税されることになる。取得価格が高ければ高いほど売却価格(譲渡益)から差し引ける金額が増え、税額が少なくなることを考えると、本来の取得費が売却価格の5%を下回ることはあまりないので、可能な限り実際の取得価格を調べるようにしたい。(2017/02/12)