所得控除の一種に、災害や盗難などで損害を受けたときに受けられる「雑損控除」がある。これは、本人の所有資産か、その人と生計を一緒にする親族(6親等内の血族や3親等内の姻族)の資産に起きた損害が対象となっている。ただし、親族に関しては年間所得が38万円以下の人に限られている。
対象となる損害は、①震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害、②火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害、③害虫などの生物による異常な災害、④盗難、⑤横領――となっている。
このなかで、判断に迷うケースをみていく。まず、散歩の途中でカバンをなくした場合。これは、例えば駅で切符を買おうとして床に置いた隙に持ち去られたのなら「盗難」として雑損控除の対象だが、いつ失くしたか分からない「紛失」なら対象外だ。そのため、「盗られたかも」と少しでも思ったら警察に届け出ておくべきだ。盗難届が出されていた方が、税務上の手続きがスムーズにいくだろう。
次に、豪雪の際の雪下ろし費用。これは雪の落下などで実際の損害にはあってはいない段階だが、豪雪が積もった危険な段階で「雪害」となり、雑損控除として認められる。
まだ実害にはあっていないが早期に手を打つ必要があるものにシロアリ駆除がある。これも雪害同様、被害前の防止策の費用が雑損控除として認められている。イノシシや猿などの害獣の侵入を防ぐための柵の費用も対象だ。ただし、シロアリの「予防」といった将来の対策は対象にならない。
自宅マンションが水漏れしたために、下階の家財に損害を与えてしまい、賠償金を支払った場合どうか。こうしたケースでは、人為による「異常」かどうかが問題となる。単なる蛇口の閉め忘れは「異常」とはいえないため対象とならないが、水道管の破裂など、やむを得ないと判断されるものは認められる傾向にある。
犯罪系では「盗難」「横領」に限っているため、「詐欺」は対象外だ。ここ数年は振り込め詐欺等が横行しており、雑損控除の対象に含めるべきだとする意見もあるが、現状では認められていない。なお、雑損控除はサラリーマンの年末調整で受けられない所得控除であるため、医療費控除や寄附金控除と同様に確定申告が必要となる。(2018/10/18)