美術品コレクターの私的所蔵品のなかには、重要文化財や国宝に指定されているものをはじめ、学術的に高い価値のものもある。
こうした美術品が、個人の所有物として非公開の状態にあるままではなく、世の中に出てくるよう、文化庁は「登録美術品制度」という措置を設けている。
登録美術品として認定されるためには美術館で公開する必要があり、自分だけで鑑賞したい人にとってはマイナスとなる。しかし、この登録美術品に認定されたものは、相続時に物納しやすくなるという税務上のメリットがある。
物納は、延納を適用しても金銭で納付できないときにモノで納税する方法で、相続税の課税価格計算の基礎となった相続財産のうち、物納財産として最初に優先されるのは国債、地方債、不動産、船舶(第1順位)。次に社債、株式、投資信託、貸付信託の受益証券(第2順位)、そして動産(第3順位)と続く。
一般的な美術品だと優先順位は第3位とされているが、登録美術品は国債や不動産などと同レベルの第1位に繰り上がる。ただし、相続が発生してから作品の相続人が登録申請しても適用できず、相続開始時点で既に登録を受けていなければならない。(2016/08/17)