都市部の農地には「生産緑地」と呼ばれるものがある。市街化区域にある300㎡以上(2017年以前は500㎡以上)の土地は、農業を続けることを前提に、「生産緑地」として30年間、固定資産税や相続税の納税が猶予されている。
現在、生産緑地は全国に約1万3千ヘクタールあり、このうち制度がスタートした1992年に指定を受けた土地が約8割を占める。このため約1万ヘクタール、東京ドーム2100個分ほどの都市部の農地が、制度開始から30年後の2022年に期限切れを迎えることになる。
生産緑地オーナーは、農地として引き続き指定を受けるか、宅地転用するために指定解除を受けるかの決断を迫られることとなる。再指定を受けると制約も10年間延長される。
国交省が2018年に実施したアンケート調査によれば、東京都練馬区・世田谷区の農地オーナーで「生産緑地指定をすべて解除する」と答えた人は8%に過ぎなかった。少なくとも一部を解除すると答えた人も2割程度にとどまり、全体の63%が「すべて指定を継続する」と答えている。
生産緑地指定を継続する背景には、2つの規制緩和がある。17年に創設された「特定生産緑地指定制度」によって、生産緑地の指定期間を30年から10年に短縮し、敷地内に直売所や農家レストランの設置も認めた。さらに18年には「都市農地貸借法」が成立し、他の農家や市民農園を経営する企業に直接貸し出すことが可能となり、必ずしも自身が営農する必要がなくなった。
生産緑地指定による税優遇は受けつつ、これまでのような営農負担がかからない選択肢が増えたことで、「指定継続」を判断するオーナーが増えたようだ。(2021/02/17)