現金以外で代償分割

不動産だと別の税負担発生


 相続財産のほとんどを自宅が占めているため、その自宅を長男が相続してしまうと弟たちとの間に不公平が生じてしまう。

 

 そうした状況で活用できるのが「代償分割」と呼ばれる方法だ。自宅を長男が引き継ぐ代わりに、自分の財産から同価値の金銭などを弟に渡すことで、不公平とならないようにする。こうしたことは自社株を後継者に集中させるケースでも起こり得る。

 

 そのため事業承継を考える上でのアドバイスに「代償分割で渡す現金に困らないよう、後継者固有の財産となる生命保険に加入しておくように」というものがある。

 

 代償分割で渡す財産は現金でなくてもいい。他の相続人が納得できる財産であれば、株式でも不動産でもかまわない。ただし現金以外だと、新たな税負担が生じるリスクがある。税法では、現金以外の資産を代償分割に利用すると、渡した時点で「時価で売却したもの」として扱う規定がある。つまり、代償分割で渡す資産の取得価額を時価から差し引いて利益が出る場合には、代償分割をした長男に譲渡所得税が課されることとなる。実際には手元に利益が残らなくても、所得税はかかってしまうわけだ。

 

 さらに代償財産が不動産であれば、代償分割で受け取った側にも、不動産取得税が課されてしまう。税法には相続で引き継いだ財産については同税を課さないという特例があるが、残念ながら代償分割にはこの特例が適用されない。また相続による所有権移転にかかる登録免許税には0・4%の軽減税率が適用されるが、代償分割では適用されず、2%の税率が課されてしまう。(2020/01/15)